「これが私の……我々の真実」
カルーセルの回転が止むと同時に、由羅は体勢を崩す。その肉体の揺らめきを精神のそれと見たか、カール=レフは由羅から錆びた手を離す。
「君が望まぬのであれば、これ以上はよそう」
由羅は首を横に振る。「慣性の法則のせいです」そして目を逸らすカール=レフの錆びた手をとる。「今度はわたしが、あなたの……あなたたちの望みを叶えます」
カール=レフは細く長い息を吐く。真冬なのに、彼の息は白く染まることはない。
「このような、異形の容貌でも、か」
触れずとも兜が跳ね上がり、煌めきの中にそのかんばせがあらわとなった。
すべてを奪われた男の顔貌。かつては健康的に浅黒かったであろう肌は奪われて、血で湿ったどす黒い筋が露出している。血走った目が、瞼を探すようにせわしなく動く。
「ありがとう」由羅は静かに頭を垂れる。
由羅の手の中で男の手が小刻みに震える。
「君の……血縁者を排したことかね」探るような沈鬱な声。どことなく湿った眼球がここではないどこかを向く。
いいえ、と由羅は首を振る。「顔を、見せてくれたことです」大層な決心だっただろう。皮膚のない顔は表情を掴みづらい。けれど、その眼差しで彼がどういう心持ちなのか、少しはわかる気がした。
「私は君を助けたかった。これまでも、虐げられた者を幾度も救ってきた。しかし、それが私達によるものだと気付いた者は少なく、そして……戻ってきたのは君だけだ。そんな誠実な人物に、どうして不実な行いができようか。私のすべてを晒すべきだと思ったのだ。過去も、肉体も」
由羅は背伸びをして騎士の胸元に顔を近づける。鼻腔を満たす香りは、鉄か、血か。
「あなたが何と言おうと、あなたはわたしの天使です。義務や報いではなく、思慕をもってあなたと交わります」
鎖が動き、吊られた体が由羅の高さまで降りてくる。騎士の全身に荊のように巻き付いた鎖が引き締まり、あるいは緩み、重たそうな脚が拓かれる。その中心には、鉄を穿つ孔。その奥の暗がりで蠢動する雄の泣き所。由羅の喉がごくり、と鳴る。見てはいけない。それを見ればもう、戻れない。
「この身は、欲するままに造り変えられた。私は……器物にされるにあたり何度も、唾棄すべき錬金術師の欲をこの身に染み込まされた。その呪いを打ち破れるのは――彼奴の精を奪胎する、新たなる精のみ」
真なるカール=レフは時祷書でも読むかのように厳かに言う。
「穢れなき者よ、妙なる両性具有よ。堕ちた騎士を天使と称する者よ――我を助けたまえ」
最初からそのつもりだった。
由羅は失われた唇に自らのそれを重ねた。
あらゆる獣の嘆息が煌びやかな空気に充ちた。
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唇のないそこに、由羅は自身のそれを重ね、舌を這わせる。死と生のあわいに封じられた男の歯列は清廉で、時に血生臭かった。しかし由羅が幼き頃に味わった怪我の味とは異なる。濃厚な呪詛と怨嗟を孕んだ熱が舌に溶けた。
体を密に触れ合わせ、接吻するたびに、錆びた鉄で包まれた男の肉体は震え、剥き出しの眼球は濡れた。
精が必要、というのは……考えるまでもない。肉体の交わりのことだ。
「穢れなき者と、あなたは言いましたが……わたしは、穢れていますよ。こんなことも、十分にできるくらいには」
今となってはすべて“無かったこと”になった過去の出来事を思い出し、由羅は悲しげに笑む。
「穢れとは、肉体や記憶のことではない。他者を助けようとするその精神は何よりも美しく清く、そして尊い。私は幼い君の精神にそれを見た。だから助けたいと思った」
カール=レフは自ら唇代わりの歯列を開き、ゆるりと舌を差し出した。肉厚で、肉体と同様に雄々しい。だが弾力があり、滑らかだった。由羅の舌に絡まるそれは、遠慮深く、おずおずとしている。相手の心を探るように、阿るように。もしあの走馬灯が真ならば、あまりにも彼らしくなかった。在りし日の彼はもっと自信に満ち溢れて堂々としていた。
「……あの邪悪以外と交わるのは初めてだ」
彼の思わぬ吐露に由羅は唇を離し、至近距離で肌のない顔を見る。
この誠実なる騎士は、彼を醜く美しい天使に変容させた錬金術師しか知らないのだ!
「いや……忘れて欲しい。気にすることはない。言いたかったのは――私はもう、誰にとっても“使いやすい器物”になっている、ということだ」
皮膚代わりの分厚い鉄に穿たれた穴の奥、肉は蠢き、熟れて、充血して、腫れて……由羅を淫奔に誘う。
「膳立てなど必要ない。ただ、思うがままに用いればいい」おそらく、錬金術師はそうしていたのだろう。「しかし何百年も、私は……使われてはいないから……」
由羅の後ろ首にぞわりと悪寒が奔る。恐怖以外でこのような反応が見られたのは初めてだった。
夢にまで見た天使の正体、この吊られた幽囚の騎士の中の穢呪のすべてを、自分のもので灌ぎたくてたまらない。こんな感情、これまでもこれからも、彼以外に抱くことはないだろう。最初で、最後だ。自らの中のそうした感情を穢れたものと恥じないのも。恥じる余裕さえない。
由羅は人体の流れを模した鉄板に触れ、リベットや彼の受難を模った悪魔的な紋様をなぞる。途端に深く長く吐き出される騎士の吐息。いまや甲冑は彼の肌なのだった。彼の健全な精神と欠けたる肉体を収容する檻でありながら。
張り出した胸を撫で、腹の凹凸を一つ一つ検めるように静かに指先でなぞる。宵闇に包まれた鎧は冷たいが、触れた場所からじわり、と熱が湧き、由羅の指を熱く燃え上がらせる。
「……っ、ふぅ……ッ、ん……」
男の限りなく低くも甘い声に由羅は昂るが、本人は羞恥からか歯を食いしばる。
あの暴虐の手に嬲られたときも、彼は同じ声を洩らしたのだろうか。だから恥じるのだろうか。由羅も唇を噛む。自分にしか上げさせられない声を探したい……そう思った。
由羅の指先が腰の継ぎ目にふれた途端「お゛ぉ……ッ」そこでわずかに熱い声が跳ねた。音のような、痛みのような、あるいは……悦びの記憶。
由羅の耳を介して、その熱は下腹に伝播する。愛欲の匂いが濃くなる。
由羅の指は、声に導かれるように呪いの中心へと下りてゆく。過ぎ去りし日に暴虐を受けた徒花に。触れるか触れないかのうちに、鉄の外皮の奥で剥き出しの肉が情けなく震えている。
鉄の入り口を撫で、滑らせるように腑に触れる。湿った粘膜は深殿へ導くように指を吸啜する。どれほどの躾を受けてこうなったのだろう。由羅の胸にどす黒い感情が芽生える。こんな天使に穢れた調教を施した人間が憎かった。そして……羨望すらした。
「そのようなことをする必要は、ない。入れればすぐ……使える」
「だめです、ゆっくり……冬の夜は長いですから」それにわたしはあなたに触れたい、たくさん。由羅はカール=レフの耳元でうっそりと囁く。
この誠実なる騎士を凌辱した錬金術師がしなかったようなことをして、彼に教えてやりたい。感謝と尊敬と愛欲による交合がどのようなものであるか。
カール=レフの肉粘膜はまるで生きているかのように――いや、生を凌駕するほど艶めかしく蠢いた。差し込まれた細い指をこれでもかと締め付け、揉み込む。これを自身の陰茎に受けたなら……由羅は想像する。おそらく堪えがたい快感となろう。
胎腔の果てへ連なる肉環のひとつひとつを指の腹でなぞり、柔らかく広げる。時に磨くように雄の泣きどころを押し込んでやると、びくりと全身が痙攣する。彼を戒める鎖がじゃらりと一つ鳴る。
「お゛……ぅ、ふ……やめ、て、くれ……声が……」男は剥き出しの歯を食いしばる。噛みしめる唇はない。
「どうして声が出てはいけないのですか」
「それは……」
言い淀んだ騎士の代わりにカルーセルが回る。その明るく不穏な管音楽と廻りは、由羅に彼の記憶と心のすべてを教えてくれた。
仄暗い部屋。皮を剥がれて吊られた男が揺れる。
錬金術師の汚れた指がカール=レフの背中に霊薬を滴らせた瞬間、彼の身体が、自分のものでなくなった。
「ぐぉ゛ッ……くッ、やめッ、やめろと言って……ッ」喉が震えた。
誰よりも強くあれと鍛え上げた肉体が、快楽の螺旋に攫われ、勝手に跳ねた。
鎖骨が脈打ち、太腿が震え、声が――「お゛……ぉ゛ほぉ゛……ッ」と、口を突いて漏れた。
なんと醜く浅ましい声だ、と錬金術師は嗤った。
カルーセルの回転が止まり、騎士は目を見開いた。
「あの時、臓腑の奥にまで薬が沁みた。脊髄が焼かれるようだった。快楽を拒んだはずなのに、肉が先に絶頂を選択した。あの声は、騎士団にも届いていたのだろうか。嗚呼、もしそうだとしたら……あの声が、再び喉奥から這い上がってきた。……聞かれたくは、なかった」
由羅はそっと頷いた。「わたしも、その声を聞きたいんです。だめですか」
カール=レフの胸が嘆息に上気し、定まらなかった視線は確かに由羅に向けられた。それは受容の色を含んでいた。
由羅は蠢く肉粘膜を優しく執拗に愛撫する。引き締まろうとする肉環を二本の指で広げ、慣らす。じわりと湧いてくる生温かな欲望。容易にこうなるまで使い潰され、呪汁を注ぎ込まれたのであろう。
「ん゛……ぁ……ぅ」
幽かな喘ぎ。由羅を受け入れた証左だった。喘ぎと共にぬるい息が漏れて、それと共に肉が甘く淫らに軋む。
「はー……ッ、ふ、う、ん゛――!?」
ゆるく撫でている時には深く感じ入るような声が、指を曲げて刺激すると飛び跳ねる。それは肉体も同様だった。がっしりとした腰が捩れ、厚い胸板が反る。鎖が擦れ、揺れる音が響く。
「お゛ぉ゛っ、それは……っ、ああ、霊薬もなしに――こんな……無様な」
「いいえ、とてもそそられます」
「何を……申すか」
逸らされた顔の中、眼窩に光が滲む。愉悦か、安堵の。死者とも生者ともつかない貌が、とても麗しく見えた。
「……っ、ほぉ、う……」
中を掻き混ぜるごとに、騎士の声は色と湿り気を帯びてくる。唇のない口腔から這い出てくる空気は甘く密だ。由羅は再び唇を重ねて吐息を奪う。混ざり合う息は柔らかく編み合わさる。彼の粘膜を濡らすのは唾液ではなく血であるが、それ故に、猶更由羅は昂る。暴力によらない血の味は初めてだった。そしてそれは酷く甘美だった。さながら聖体拝領だ。儀式的で厳かで、清い。
由羅を抱こうと藻掻く腕を、彼女は引き寄せ身体に回す。じゃらり、と錆びた鎖が背を撫でる。重たく、そして冷たい。彼の舌は燃えるように熱いというのに。
密着する鉄と肉。由羅の雄が鉄膚に触れる。かの騎士の媚態にあてられ、そこはすでに怒張していた。服が窮屈に感じられる。
嗚呼……と、騎士の胸の奥深く、黒々とした血で照る内臓から、深い息が送り出される。緊張なのか、感嘆なのか由羅にはわからないが、後者ならばいいと思った。
「頼む……情けを……」
掠れた声。擦り寄せられる腰。細やかに震える鉄の身。赤剥けた異形の顔貌。血腥い錆の香り……すべてが由羅を昂らせる。抱かれる快楽を自ら選び取った男というのは途方もなく淫ら。
男の中から指を引き抜くと、彼は「んっ」と一つ甘ったるい声を吐き出す。
その音に完璧に堪えを失くした由羅は自らを開放する。ぶるり、とそり返る怒張。雄々しく、太く長大――まるでその欲望が形を取ったようだった。槍のように鋭く、しかし有機的に脈打ち、装飾は隆々とした血管。中性的とよく称される彼女の肉体のなかで、ここだけが妙に雄の性徴を示していた。
これがあるせいで、何度かつての両親にあげつらわれ、不満の捌け口や商品として蹂躙されたことだろう。それがいま、この時だけは誰かの役に立つのだという気概が満ちる。
欲の滲む先端を鉄の口に宛がう。ゆっくりと慎重に腰を進める。苦悶の色があったならばすぐにでも止めるつもりだったが……肉楔は湿った音を立てて容易に飲み込まれてゆく。抵抗はなく、鉄に囚われた肉体は美しい弓形を描いて柔軟に反って――彼のこれまでの凌辱遍歴が偲ばれた。
歯列の深みから「ふ……っ、う、うぅ……」と、懊悩の音が漏れてくる。素直に快感に身を委ねるべきか、矜持をもって耐えるべきか考えあぐねているかのような音だった。
由羅は唇を寄せてその声を吸い上げる。緊張を解すように。声を引き出すように。
「お゛ー……ッ、お、おぉほ……ん……」
肉杭が終端へ進むごとに開かれてゆく歯列。膿んだ口腔粘膜の中で舌がのたうつ。まるでそれ自体が彼の肉体と精神を蝕む蛆かのように。肉体に熱が籠り、とても心地よい。冬の寒ささえ凌駕する、その愛欲。
血か粘液でぬるついた臓腑を割って、契約の楔が最果てを穿った。その瞬間、肉粘膜がねとりと楔を慰撫し、歓待する。その堅牢さ、鋭さを鎮めるかのように。まるで荒ぶる神に奉納されし生贄。まったくもって、立場が逆転していた。
「入りました、全部……。動いてもいい、ですか」
皮膚のない貌が何度も頷く。沈黙は全身を貫く快感の証拠であろう。
「いい……好きなように、使ってくれ……」
感じ入るように深い声と、うっとりと潤む眼球。そう言うように、そうなるように躾けられたのであろうか。
「使うなんて、そんなことはしません」敬意と感謝を抱いているからには。錬金術師と同じようにはしたくなかった。「あなたが快楽を覚えることこそ、あなたが解放されるということです」そして由羅さえも、なかったことにされた過去の記憶から解放されることだろう。
動いてさえいないのに、カール=レフの声が軋む。
「嗚呼、そんな、まさか、言葉一つに、行為一つにここまで……心乱されるとは」
声と同じく、艶めかしく蠢く臓腑。どのような使われ方をしたとて、その身は精神と密接に結びついているようだ。由羅は一つ、幽かな嘆息を吐いて腰を動かし始める。
引き抜き、行き止まりを穿つ毎に雄の低い声が艶めく。呪われた血肉がざわめき、夜の鼓動が強く激しく、内側から鉄の軛を押し上げる。
男の胎内は――そう言っても差し支えなかろう――由羅を優しく包み込み、揉み込んでくる。媚びるように。深く求めるように。
突けば「お゛ッ! ん゛ぉ゛ッ!」と鋭い声が呼応し、引き抜けば「お゛ぉ~……ぉ――」と長く尾を引く声があがる。錬金術師に教え込まれたか、それとも彼の器質から来るものなのか……どちらにせよその音は由羅の性感を昂らせる。腰の奥深くが重たく、焦れてくる。
「あ、あぅ、気持ちいい、です……こんなの、初めてで……」由羅は眉をきつく顰めて浅く疾い息を吐く。自らの見境のない欲望を抑制するために。
「もっと、気の済むまで激しくして構わない……今宵、私は自らの意思で君を選んだ。だから……」
最初の決意はとうに消え、由羅は自分本位に律動させる。しかしそれでも、カール=レフの肉体に苦悶の色はない。それどころか、自ら主体的に由羅の動きに合わせて腰を蠢かせてくる。
「こんな場所、こんな感覚……あの男さえ……」愉悦に身悶える脚は由羅の細腰をしっとりと絡めとる。濡れた臓腑が肉楔を吸啜する。媚びるようなその動き。「君そのものが……っ、霊薬、か……」
血走った目に潤んだ膜が張る。由羅はそのガラス玉のような目に口づけし、涙を舐めとる。いとも清廉な味わい。由羅にとってはこちらの方がよほど霊薬だった。うなじで爆発した愉悦が脊柱を駆け下りて肉楔をより強靭に、しかし堪えは奪い去る。
由羅のそんな余裕のなさを感じてか、赦しを与えるように耳元で囁いてくる声。
「もっと、私を……私で……思う様貪り、欲を……」
由羅は騎士を回転軸に押し付ける。輝く音を立ててざわめく鉄。鎧を戒める鎖が泣くように軋む。しかしその貌は荒々しい行いにも愉悦に歪む。身に沁みついた暴虐が彼をそのような嗜好にさせたのか。由羅には分からない。わからないが「あ……ッ、ああ……構わない、好きなように……」彼が悦んでいるのだけは確かにわかる。
肉体の欲するままに騎士の中を味わう。生死のあわいにある肉環の動きはひどく心地よかった。より濃密な快楽を求め、一際深く、ずしり、と底面を穿つ。興奮に充血して浮腫んだ肉道も、狭まった関門も、肉槍で一息に磨り潰す。
「お゛ッ、お゛ぉうッ!? おぉ……」曝け出される、甘く哀れに煮崩れた声。それは由羅の耳に流れ込んで心地よく犯す。
錆びた四肢は細い身体を締め付け、女の責め苦に身悶える。開け放たれた歯壁の中、蠢く舌。相手の絶頂した様子と、肉粘膜の妖艶な締め付けに由羅の腰が重くなる。
「すまない……っ、先に……あぁ……」悔やむように漏れる声。しかしそれはどこか充足した色があった。「施しを受ける立場でありながら」
相手が先に情に至ったことに気をよくした由羅は、幽かな笑みを煌めく夜に溶かす。「嬉しいです」
絶頂の過ぎ去った内壁は和らいで、きつく精を強請るばかりだった吸い付きが、いまやいやましに甘く、まるで蜜月。
それなのに、由羅を見る目は蕩けつつ、どこか切なげ。
血濡れた貌が由羅の肩にしなだれかかり、剥き出しの歯が皮膚を甘く噛み、その痕を舌が癒す。
「痕を……君に……残したい、少しでも……救ってもらう身の上で、そう願ってしまう」
「それも、すごく嬉しいです」
由羅は素直に身を差し出す。昂揚し火照った肌に加えられる甘い痛みは、由羅を愉悦の高みに押し出すのには十分過ぎた。
余裕のない無慈悲な、しかし情だけは多分に籠ったまぐわい。しなやかな腰が見た目からは想像もつかないほどの鋭さと激しさをもって騎士を穿つ。
「嗚呼……嗚呼、こんな……剛勇な……」
剥き出しの眼差しが互いの結合部に注がれる。退いては還す肉槍は由羅の予想以上に太く、脈打つ血管も生々しい。それがぬめった肉穴を出入りして暴く様は淫猥。
寒空に由羅の白い息だけが激しく舞う。
「ん゛ッ、もう、お゛ぉっ、また達して……頼む、中に……ッ」
わかってます、わかってます……と由羅は途切れ途切れに呟いて、終わりの合図として数度、カール=レフの仕舞を叩きつけた後、引き抜いた勢いもそのままに雄膣の最奥を制圧し、精を放った。肉楔は脈打ち、彼の者を開放する鍵をその奥津城へと送り込む。由羅の脳と肉の芯が綯い交ぜに脈動する。
「あ……こんなに、たくさん……止まらない、の……っ」由羅の声が震え、剥き出しの喉が透けて見えそうだ。まるで、吐息ごと溶け出すかのように。
「お゛ぉ……んぉッ、きた……ッ、これが最期でも……嗚呼、構わん――」
鉄躯が仰け反り、咽喉の引き裂かれた痕が晒される。生々しい傷口から、霧を吹いたように迸る血潮が由羅の頬を濡らす。引き抜いた陰茎には精の名残と粘液が纏いつき糸を引く。たぽ……と男の臓腑で重たく胎内を満たす欲液が音を立てる。
カール=レフは力なく、くたりと倒れ掛かる由羅の体を抱きとめ、優しく撫でる。その手は、血に濡れてなお温かかった。
「そなたの慈悲を待っていた……ずっと……そなたでなければ、きっと……だめだったろう」カール=レフの息が肺の奥で火が灯るように力強くなり、吐き出されたそれは見る間に白くなってゆく。「君の精が、我らが魂の輪廻を終わらせた。時はきた……」
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